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東京高等裁判所 平成2年(ネ)3032号 判決

第三〇二八号事件被控訴人、第三〇三二号事件控訴人(以下「一審原告」という。)

野村典子

右訴訟代理人弁護士

小野幸治

第三〇二八号事件被控訴人、第三〇三二号事件控訴人(以下「一審原告」という。)

細井絢子

右訴訟代理人弁護士

後藤昌次郎

第三〇二八号事件控訴人、第三〇三二号事件被控訴人(以下「一審被告」という。)

岸川基彦

右訴訟代理人弁護士

宮﨑富哉

主文

一  本訴請求に関する一審原告らの本件控訴をいずれも棄却する。

二(一)  反訴請求に関する一審原告らの本件控訴に基づき原判決主文第二項を次のとおり変更する。

一審原告らが別紙物件目録一記載の土地及び同二記載の建物につきそれぞれ一二分の一を超える共有持分を有しないことを確認する。

その余の反訴消極的確認請求を棄却する。

(二)  反訴請求に関する一審原告らのその余の本件控訴をいずれも棄却する。

三(一)  反訴請求に関する一審被告の本件控訴に基づき原判決主文第三項を次のとおり変更する。

一審被告が別紙物件目録一記載の土地及び同二記載の建物につき一二分の一〇の共有持分を有することを確認する。

その余の反訴積極的確認請求を棄却する。

(二)  反訴請求に関する一審被告のその余の本件控訴を棄却する。

四  訴訟費用は本訴及び反訴ともに第一、二審を通じてこれを六分し、その五を一審原告らの負担とし、その余を一審被告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一一審原告ら

1  本訴請求について

(一)(1) 原判決を取り消す。

(2) 亡岸川茂(以下「茂」という。)の昭和六〇年三月三一日付の別紙記載内容の遺言は無効であることを確認する。

(3) 一審被告は、一審原告らに対し、別紙物件目録一記載の土地及び同二記載の建物(以下「本件土地建物」という。)につき、東京法務局調布出張所昭和六〇年一二月二日受付第四八一七六号をもってなされた同年五月八日相続を原因とする所有権移転登記(以下「本件登記」という。)を、相続を原因として一審原告ら及び一審被告の持分割合が各六分の一、岸川静の持分割合が二分の一とする所有権移転登記に更正登記手続をせよ。

(4) 訴訟費用は、第一、二審とも一審被告の負担とする。

(二) 右(一)(3)の請求についての予備的請求

一審被告は、一審原告らに対し、本件土地建物につき、本件登記を、相続を原因として一審原告らの持分割合が各六分の一、伊藤和子及び岸川武彦の持分割合が各一二分の一、岸川静の持分割合が二分の一とする所有権移転登記に更正登記手続をせよ。

2  反訴請求について

(一) 原判決中一審原告らの敗訴部分を取り消す。

(二) 一審被告の反訴請求をいずれも棄却する。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも一審被告の負担とする。

二一審被告

1  本訴請求について

(一) 本件控訴をいずれも棄却する。

(二) 控訴費用は、一審原告らの負担とする。

2  反訴請求について(一審被告は、「控訴状」の「控訴の理由」において、反訴請求につき遺言無効確認本訴請求が棄却されることを解除条件とする旨主張したが、申立としてはその趣旨を明示せず、また、右主張を「控訴の趣旨訂正申立書」によって撤回したものと認められるので、一審被告の反訴は単純反訴と解する。)

(一) 原判決中一審被告の敗訴部分を取り消す。

(二) 一審被告が本件土地建物につき所有権を有することを確認する。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも一審原告らの負担とする。

第二事案の概要

一本件は一審原告ら及び同被告の父である茂の遺産である本件土地建物の帰属をめぐる相続人間の争いである。茂の相続人は妻静と子である一審被告(長男)、一審原告ら(長女、次女)の四人であったが、静は茂の死亡後の平成元年七月一七日死亡した。中心的争点は、別紙「證」と題する茂作成の書面(以下「本件書面」という。)の効力である。一審被告は、本件書面は自筆証書遺言で、これにより本件土地建物は一審被告が単独相続したとして、その旨の本件登記を経由し、仮に一審原告らの主張するように、本件書面が自筆証書遺言として無効であるとしても、死因贈与としては有効であると主張している。一審原告らは、(一)主位的請求として、(1)本件書面が自筆証書遺言としては、方式違背もしくは遺言者の意思無能力により無効であるとして遺言無効確認と(2)本件土地建物についての法定相続を理由として、本件登記の更正登記手続を、(二)右(一)(2)の予備的請求として、本件土地建物についての法定相続並びに一審被告の民法八九一条四号による相続人又は受遺者としての欠格及び一審被告の子である伊藤和子及び岸川武彦の代襲相続を理由とする更正登記手続を求めている。

一審被告は、遺言又は死因贈与により本件土地建物を単独で取得したとして一審被告の単独所有の確認とあわせて一審原告らが共有持分を有しないことの確認を求めている。これに対し、一審原告らは、予備的に遺留分減殺を主張する。

本判決は、本件書面の自筆証書遺言としての有効性と遺留分減殺を認めるものである。

二争いのない事実

1  本件土地建物は茂(明治三二年一月二六日生)の所有であった。茂は昭和五九年八月一八日国立大蔵病院に前立腺がんの治療のため入院し、その後一時退院、再入院をくり返したが、昭和六〇年五月八日同病院で死亡した。

2  茂の法定相続人は、妻静といずれも嫡出子である一審被告及び一審原告らの四人であった。茂の遺産のうち不動産は本件土地建物のみであり、相続開始当時、静と一審被告及びその妻と長男がこれに居住していた。一審原告野村は当時熊本市に家族と共に、同細井はアメリカ合衆国に単身で生活していたが、一審原告両名は同年一〇月四日東京家庭裁判所に遺産分割調停の申立をしたところ、相手方である一審被告は、本件書面を提出し、全遺産は自己の所有であると主張した。同年一一月二八日東京家庭裁判所によって本件書面は遺言書として検認された。その全文、日付、氏名は茂の自署であり、茂が押印したものである。そして、一審被告は同年一二月二日本件土地建物につき自らを単独相続人とする本件登記を経由した。一審原告らの代理人は、一審被告に昭和六一年四月一九日到達した書面で、本件書面は民法九六八条二項所定の方式を備えていないので、自筆証書遺言としては無効であるが、もし有効であるとすれば、遺留分減殺の意思表示をする旨通知した。

3  本件書面作成日である昭和六〇年三月三一日当時、茂は大蔵病院に入院中であったが、主治医の外泊許可を得て、自宅に滞在中であった。

一審原告ら代理人は、平成二年六月二七日の口頭弁論期日において、本件書面による茂の意思表示を強迫によるものとして取り消す旨の意思表示をした。

三争点

1  民法九六八条二項は「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。」と定めている。本件書面は、末行に「但死亡後の事」と記載されている。この末行の記載は、民法の右条項にいう「加除その他の変更」にあたり、同条項所定の方式を欠くもので自筆証書遺言として無効か。

2  本件書面作成当時、茂はその意味及び効果を理解する意思能力を有していたか。

3  本件書面は、一審被告が茂を強迫して作成させたか。

4  一審原告らの遺留分減殺請求は、その後六か月内に裁判上の請求その他法定の手続をしなかったことにより時効中断の効力を失い、一審原告らの遺留分減殺請求権は時効消滅したか。

第三争点に対する判断

一本件書面中の「但死亡後の事」との記載は、民法九六八条二項の「加除その他の変更」にあたるか。

本件書面は、別紙のとおり一枚の紙に六行の記載があり、一行目に「證」、二、三行目にかけて、「私岸川茂所有の土地家屋他現金書画一済を長男基彦の所有とす」、四行目に「昭和六十年三月三十一日」、五行目に「岸川茂」の署名捺印、六行目に「但死亡後の事」と記載されている。六行目の「但死亡後の事」という記載は、日付及び署名捺印の後に書かれているから、常識的な意味では「付け加えられた」記載であるといえないことはない。しかし、民法九六八条二項が自筆証書遺言の「加除その他の変更」について厳格な方式を定めたのは、一旦作成された自筆証書遺言が、遺言者の意思によらずに変更されることを防止する趣旨と解されるから、右条項にいう「自筆証書中の加除その他の変更」は変更前の自筆証書遺言が一旦作成されて存在することを前提としていると解される。本件書面は、「但死亡後の事」の記載がなければ、生前贈与の意思表示と解することはできても、遺言と見ることは難しい。本件書面は、末行に「但死亡後の事」と加えたことによって、自筆証書遺言としての意味をはじめて備えたものであり、一旦作成された自筆証書遺言に「加除その他の変更」を加えたものとはいえない。したがって「但死亡後の事」との記載が民法九六八条二項所定の「自筆証書中の加除その他の変更」に該当することを前提とする一審原告らの主張は理由がなく、本件書面は自筆証書遺言として同条所定の方式に欠けるところはないものというべきである。

二本件書面作成時の茂の意思能力

本件書面が作成された昭和六〇年三月三一日当時茂は、八六才で、前年の八月から前立腺がんの治療のため入、退院をくり返していたこと、本件書面作成の日から三八日後である同年五月八日には、右の病気のため死亡したことは当事者間に争いがない。

そして、茂は、七八才の頃、熊本市の野村典子宅に遊びに行った際、一人で外出し、帰り途がわからなくなって郵便局員に連れ帰ってもらうようなことがあったり、日記を書いている途中で妻静に「今日はどこへ行ったかな」とか「今日何をしたかな」などと自分の行動について尋ねるようなことがあったこと、入院中パジャマにスリッパのまま医師の許可を得ずに病院を抜け出して自宅に帰ったりしたこともあったことが認められる(原審における一審原告野村典子の供述)。これらの点から、一審原告らは、茂は判断力、自己規制力を失い、精神能力が著しく衰退し、老人性痴呆、精神の幼児化が進み、本件書面作成当時、その意味、効果を理解する意思能力を失っていたと主張する。

しかし、茂の主治医であった大蔵病院の斉藤泌尿器科医長は、当時茂は、「遺言書作成の精神的能力は有していたと思われる。」その理由として「言語状態もしっかりしていること、全身状態もよくなってきたため、四月一日御退院と話したのが三月二九日であり、その後に退院準備のため外泊を許可した。」と裁判所の調査嘱託に回答し、同旨の証言もしていること(原審における調査嘱託の結果、原審における証人斉藤賢一の証言)、三月三〇日に帰宅した際、茂は、自己名義の預金通帳を見て、毎月一回八万円が払い戻されているはずであるのに、三月に限り二五日と二九日の二回それぞれ八万円が払い戻されているのを発見し、一審被告にその理由をただした結果、間違って払い戻されたことが判明したこと(原審における一審被告本人の供述、原審における証人岸川良子の証言、〈書証番号略〉)等に照らすと、茂の精神的能力は当時さほど低下していなかったと考えられること、また本件書面は茂が自ら書いたものであり、その内容は簡明なもので、その意味、効果を理解するためにそれほど高度の意思能力を必要とするものではないことからすれば、一審原告らの主張は、採用できない。

三強迫の成否

本件書面を茂が作成した状況について、一審被告とその妻良子は、およそ次のように述べている。

昭和六〇年三月三一日午前一一時ころ、良子が自宅リビングルームに行くと、前日外泊を許されて自宅に帰った茂は機嫌のよい様子でテーブルに向かって椅子に腰掛けていたが、良子に紙と書く物を持って来るように言った。良子が二階から紙とサインペンを持って来て茂に渡すと、茂は「基彦を呼びなさい。」というので、ピアノ室でピアノの練習をしていた一審被告を呼んだ。静も呼ばれて、同席した。茂は、一審被告、静、良子の三人の目の前で本件書面をさらさらと書き、署名捺印してから、「ああ、そうだ。「但死亡後の事」」と笑いながら書いて、一審被告に渡した。一審被告は、母静に促され、礼を言って本件書面を受け取った(原審における一審被告本人の供述及び証人岸川良子の証言)。

これに対し、一審原告らは、本件書面はその内容において妻静のことに全く触れられていない点で不自然であり、茂夫婦と一審被告夫婦とは不仲であったことからみても、茂が任意にこのような書面を書くはずはなく、一審被告が凶暴で貪欲である一方、茂が一審被告を恐れていたことからすれば、茂は一審被告に強迫され、意に反して本件書面を作成したに違いないと主張する。

この点について一審原告らの主張する事実の中、茂が大蔵病院から無断で抜け出して帰宅したときに、一審被告が大声で叱ったことがあることは認められる(原審における一審原告野村典子の供述)が、このことからただちに茂が一審被告に恐怖心を抱いていたと推認することはできず、茂の昭和五一年九月から昭和五九年七月までの日記(乙五ないし三一号証)を通読しても茂夫婦と一審被告とが、特に不仲であったことをうかがわせるような記載は見当らず、かえって昭和五二年九月一九日の日記(乙九号証の二)には、自らの遺産について、本件土地建物は分割せずに一審被告に継承させ、静の老後の世話も一審被告に期待したいと茂が考えていたことが記載されている。これらの点からすれば、茂が本件書面のような内容の遺言を任意にするはずがないという程の事情は認められない。また、本件土地上に昭和三六年ころ茂は一審原告細井とその子雅生のために、二階建ての離れを建築し、ここに二人が居住していたが、細井は昭和四六年に渡米し、雅生も昭和五五年三月には他に転居したところ、昭和五九年ころ一審被告の長男武彦がその建物を取り毀し、跡地に自分のために芝居のけい古場を建てたこと、茂はこれを一たんは了解したが、のちにこれを後悔していたこと(〈書証番号略〉)、また茂が死亡した昭和六〇年五月八日の午前二時ころ、一審被告と長男武彦が雅生の居宅を訪れ、武彦が雅生を殴打して、雅生が静から預っていた貸金庫の鍵を奪い取ったが、一審被告はこれを止めようともしなかった事実は認められる(〈書証番号略〉、原審における証人細井雅生の証言)。しかし、これらの事実から、ただちに一審被告が凶暴かつ貪欲で、本件土地建物独占のため茂を強迫して本件書面を作成させたと推認することはできない。他に茂が本件書面を作成した状況について、一審被告と妻良子が述べている前記のような状況が偽りであり、一審被告が茂を強迫して本件書面を作成させたと認むべき証拠はない。

四遺留分減殺請求について

1  遺留分減殺請求権は形成権であって、一たん右請求権を行使する旨の意思表示がなされた以上、確定的に減殺の効力を生じ、もはや右減殺請求権そのものについて民法一〇四二条による消滅時効を考える余地はないものというべきである(最高裁昭和四〇年(オ)第一〇八四号、同四一年七月一四日第一小法廷判決、民集二〇巻六号一一八三頁、同昭和五三年(オ)第一九〇号同五七年三月四日第一小法廷判決・民集三六巻三号二四一頁参照)。したがって、遺留分減殺請求権行使の意思表示後六ヶ月以内に裁判上の請求をしなかったから、右減殺請求権行使の意思表示に時効中断の効力はなく、一審原告らの減殺請求権は時効消滅したとの一審被告の主張は理由がないものというべきである。また、一審原告らが遺留分減殺請求権行使の意思表示をした後に本件遺言無効確認の訴えを提起したからといって、先になした遺留分減殺請求権行使の意思表示を撤回したものということはできない。

2  ところで、特定遺贈について遺留分権利者のした減殺請求権の行使によりその一部が効力を失ったときには、当該財産は受贈者と遺留分権利者との物権法上の共有に属するに至るものと解すべきであり(最高裁昭和五〇年(オ)第九二〇号同五一年八月三〇日第二小法廷判決・民集三〇巻七号七六八頁及び前掲最高裁昭和五七年三月四日第一小法廷判決は、右のような考えに立つものと解される。)、また、複数の共同相続人が遺留分減殺請求権を同時に行使したときには、当該取戻財産は右共同相続人の物権法上の共有に属するに至るものと解するのが相当であるところ、共同相続人に対する遺産全部についての包括遺贈は当該遺産を構成する個々の財産についての特定遺贈の集合体にほかならないものと解すべきであるから、右のような包括遺贈に対し複数の遺留分権利者から同時に減殺請求権が行使された場合においても、右包括遺贈の対象たる個々の財産は、受遺者と遺留分減殺請求権を行使した共同相続人との物権法上の共有に属するに至るものと解すべきである。そして、右のように共有に属するに至った財産についての共有持分の割合は、当該遺留分の遺贈に対する割合により自から定まるものであり、共同相続人のいわゆる寄与分を考慮して定める余地はないものというべきであり、また、右共有関係の解消は民法所定の共有物分割の方法によるべきであり、右分割においても共有者である共同相続人のいわゆる寄与分を考慮する余地はないものというべきである。

本件において、一審被告は、茂の死亡により本件書面による包括遺贈に基づき本件土地建物のそれぞれにつき全部の所有権を単独で取得したものであるが、共同相続人であり各一二分の一の遺留分を有する一審原告らが同一の書面(〈書証番号略〉)をもって遺留分減殺請求権行使の意思表示をしたものであるから、本件土地建物は、一審原告らがそれぞれ一二分の一、一審被告が一二分の一〇の割合による物権法上の共有に属するに至ったものというべきである。

第四結論

以上説示したところによると、(一)一審原告らの本訴請求はいずれも理由がなく棄却すべきものであり、(二)また、一審被告の反訴消極的確認請求は、一審原告らがそれぞれ本件土地建物につき一二分の一を超える共有持分を有しないことの確認を求める限度で理由があるが、その余は失当として棄却すべきものであり、(三)一審被告の反訴積極的確認請求は、一審被告が本件土地建物につき一二分の一〇の共有持分を有することの確認を求める限度において理由があるが、その余は失当として棄却すべきものである。したがって、(一)一審原告らの本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、一審原告らの本訴請求に関する本件控訴は理由がないので、いずれもこれを棄却することとし、(二)一審被告の反訴消極的確認請求に関する原判決中一審原告らの本件土地建物に対する各一二分の一の共有持分につき右請求を認容した部分は違法であるから、これを取り消し、同部分についての右請求を棄却し(以上は、別言すると主文二(一)のとおりとなる。)、右請求に関する原判決のその余の部分は相当であるから、一審原告らの反訴請求に関するその余の本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、(三)また、一審被告の反訴積極的確認請求に関する原判決中一審被告の本件土地建物に対する共有持分の割合につき一二分の二を超えて棄却した部分は違法であるから、これを取り消し、一審被告が本件土地建物につき一二分の一〇の共有持分を有することを確認し(以上は、別言すると主文三(一)のとおりとなる。)、右請求に関する原判決のその余の部分は相当であるから、一審被告の反訴請求に関するその余の本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、(四)訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官柴田保幸 裁判官白石悦穂 裁判宮犬飼眞二)

別紙證

私岸川茂所有の土地家屋他現金書画一済を長男基彦の所有とす

昭和六十年三月三十一日

岸川茂

但死亡後の事

別紙物件目録

一 東京都世田谷区船橋二丁目五三番七

宅地 568.79平方メートル

二 東京都世田谷区船橋二丁目五三番地

家屋番号 五三番三

木造瓦葺平家建居宅(現況木造瓦葺二階建)

床面積 34.71平方メートル

(現況一、二階合計205.48平方メートル)

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